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有限責任事業組合(LLP)

 
 有限責任事業組合(LLP)は株式会社や合同会社などと並ぶ、新たな事業体です。海外の類似の事業体であるLimited Liabillity Partnership(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)と同様、通称でLLPと称しています。
 
 LLPは①構成員全員が有限責任で、②損益や権限の分配を自由に決めることができるなどの内部自治が徹底し、③構成員課税の適用を受ける、という3つの特徴を兼ね揃えており、この3つの効果によって、大企業同士、大企業と中小企業、産学連携、専門人材同士などの様々な共同事業が促されると見込まれています。
 
 

―①有限責任性―

 
 
 有限責任とは、出資者(LLPの場合は組合員)が、出資した金額の範囲までしか組合の債務を弁済する責任を負わないこととする制度です。例えば、組合が100万円の債務を負ったとしても、組合員Aの出資した金額が10万円であった場合、Aについては10万円の範囲内で弁済を行えばよいということになります。この有限責任性により、組合員にかかる事業上のリスクは低減され、事業に取り組みやすくなります。
 
 

―②内部自治の徹底―

 
 
 内部自治とは組織の内部ルールが、法律によって詳細に定められるのではなく、出資者同士の合意によって自由に決定でき、運営することができることをいいます。LLPは株式会社のように株主総会や取締役会などの機関を置く必要がなく、総組合員の同意があれば、内部ルールを自由に決めることができます。
 これにより、仮に、出資額が少なくても、出資者の労務・知的財産・ノウハウの提供など技術面での貢献を考慮して、出資比率と異なる損益や権限の分配をすることも可能になります。
 
 

―③構成員課税(パススルー課税)―

 
 
 法人格のある株式会社や合同会社では、会社が得た利益に対して法人税が課せられ、かつ、会社から得た利益(個人所得)に関しても別途課税されるという二重課税が適用されています。
 一方、LLPは法人格がないため、損益に対して法人税は課せられず、損益の分配を受けた組合員においてのみ課税されます。この組織段階では課税せず、利益の分配を受けた出資者(組合員)に対して直接課税する仕組みを「構成員課税(パススルー課税)」といいます。
 また、LLPの事業で損失が出た場合には、組合員の出資額を基礎として定められる一定額の範囲内で、その組合員の他の所得とLLPの損失を通算することができます。
 
 このように構成員課税制度によって、法人格をもった組織体よりも税金面で優遇を受けることができます。
 
 

―④その他の特徴―

 
 
・上記でも述べましたが、LLPは、「組合」という事業体であり株式会社や合同会社と異なり法人格がありません。
・LLPは個人または法人が営利目的の共同事業を営むための組織であり、設立には最低2名以上の組合員が必要で法人も組合員となることができます。
・組合員の出資金額は1人1円以上なので、最低でも2人で2円以上の出資金が必要となります。
・また、出資金については「金銭その他の財産」に限定されているので、「労務・信用」等を出資の目的とすることはできません。
・LLPの業務執行に関する意思決定は、原則、総組合員の一致で行います。
・LLPは組織変更をすることができません。つまり、LLP設立後にさらなる事業拡大を目指してLLPから株式会社や合同会社などの法人形態に組織を変更することはできないということです。
 
 

―⑤LLPの活用―

 
 
 LLPが活用されるのは、法人や個人が連携して行う共同事業です。
 具体的には
・大企業同士が連携して行う共同事業(共同研究開発、共同生産、共同物流、共同設備集約等)
・中小企業同士の連携(共同研究開発、共同生産、共同販売等)
・ベンチャー企業や中小・中堅企業と大企業の連携(ロボット、バイオテクノロジーの研究開発等)
・異業種の企業同士の共同事業(燃料電池、人口衛星の研究開発等)
・産学の連携(大学発ベンチャー等)
・専門人材が行う共同事業(ITや企業支援サービス分野:ソフトウエア開発、デザイン、経営コンサルティング等)
・起業家が集まり共同して行う創業
などでの活用が考えられます。また、農業やまちづくりといった分野においてもLLPによる新たな事業展開が検討されています。